a-12 laneyjane.com
日雇労働者,臨時工,社外工,季節労働者などに代表される非正規雇用については1970年代まで
は不安定就業問題として論じられてきた。当時は,研究者だけでなく,労働行政サイドからも,こ
れらの雇用形態は正規雇用と比較して労働条件の面で種々の格差があり,雇用も不安定であるため,
いずれは解消すべき存在として認識されていた(伍賀1990)。不安定就業問題の体系的な研究成果
は江口英一(1979,1980)である。これを踏まえてマルクス経済学の相対的過剰人口論の視点から
不安定就業労働者研究を集大成したのが加藤佑治(1980,1982,1991)であった。加藤によれば,
不安定就業労働者の「不安定」とは,「資本の蓄積欲求によって過剰な,したがって現役軍から差
別されることによって資本蓄積の結果のみならず条件として不安定な就業状態におかれその生存を
もおびやかされている就業者の状態」(加藤1991: 42ページ)のことである。加藤は不安定就業労
働者の指標として,1)その就業が不規則・不安定であること,2)賃金ないし所得がきわめて低い
こと,3)長労働時間あるいは労働の強度が高いこと,4)社会保障が劣悪であること,5)労働組
合などの組織が未組織であることなどを挙げている。加藤は,このような特徴をもつ不安定就業労
働者は「相対的過剰人口の三形態のいずれにも存在しうるのであるが,とくに停滞的過剰人口にお
いてますます大量にかつさまざまな形態で存在するようになる」(同,92ページ)と考えた。
相対的過剰人口と不安定就業労働者の関連に関する加藤の理解にたいする批判が伍賀一道(1988)
によって行われた。すなわち,不安定就業労働者は,資本蓄積の目的および結果として「本来の現
役労働者」から排除されているという意味で相対的過剰人口に属するであろうが,他面でその多く
が不安定な状態のままで独占資本の資本蓄積にとって必要不可欠な労働力として剰余労働を強制さ
れるという「矛盾」した存在になっている。言い換えれば,独占資本は自己の蓄積欲求にとって必
要不可欠な労働力までも削減(「過剰人口化」)したうえで,形式上は労働契約関係を結んでいない
労働者(社外工,下請労働者,派遣労働者)やパートタイマー,臨時・日雇労働者などを積極的に
利用して,労働コストを削減しつつ,使用者責任の回避を図っている(「寄生的雇用管理」)。今日,
新たに増大している不安定就業労働者(「相対的過剰人口の現代的形態」)は,過剰人口でありなが
ら資本蓄積にとって必要不可欠な位置を占めるというはなはだ矛盾に満ちた存在である。